釜山日本人学校にとって、ナザレ園訪問は最も大切な行事のひとつです。今年は、先週末の金曜日、子どもたち38名とともに、慶州(キョンジュ)のナザレ園を訪問しました。
ナザレ園は、太平洋戦争や朝鮮戦争の混乱のなかで、日本への帰国の機会を失った日本人女性を保護・支援するためにつくられた施設です。園長の宋美虎(ソン・ミホ)先生からお聞きした話では、かつてこの施設から147名の方々が日本に帰国されたそうです。ただ、皆さんご高齢となり、この35年間は帰国した方はおられず、終の棲家としての役割が高くなっています。日本人学校の子どもたちの発表を見るために、日本人女性だけでなく、同じ敷地内にある施設で生活している韓国人高齢者の皆さん、そのお世話をしているスタッフの皆さんが会場の席が足りなくなるほど集まってくださいました。
また、芙蓉会釜山本部の國田房子会長も例年通り、東采(トンネ)のご自宅から応援に駆けつけてくださいました。芙蓉会とは、太平洋戦争前後に朝鮮人男性と結婚し、朝鮮(韓国)に移り住んだ日本人女性の皆さんの会です。今年104歳の國田房子さんは、数十年間、会長として芙蓉会釜山本部を引っ張っておられます。その傍ら、日本人学校の入学式・運動会・バザー・新年お楽しみ会・卒業式には必ず足を運んでくださいます。子どもたちにとっては、韓国の偉大なハルモニ(おばあさん)です。1944年に玄界灘を越えて韓国に渡られて以降多くの苦労に遭遇されたはずです。でも、その中で7人のお子さんの子育てに加え、韓国内の家族も友達もいない日本人女性を探しては支援してこられました。私たち教職員や子どもたちにもいつも満面の笑みで接してくださいます。そのお人柄、スケールの大きさには圧倒させられます。今回も、ナザレ園に暮らす旧知の皆さんと久しぶりの再会を喜びながら、子どもたちの発表にエールを送ってくださいました。
現在、釜山日本人学校では、日韓両方を行き来しながら仕事される保護者が増え、当たり前のように同じ教室で、日本国籍・二重国籍・韓国籍の子どもたちが学んでいます。この子どもたちが、更に日韓の架け橋となるようとの思いが強まるナザレ園訪問でした。