お礼

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 教職生活40年間の最後の3年間を歴史ある釜山日本人学校にて勤務できたことを光栄に思います。ご承知のとおり、釜山日本人学校は1975年(昭和50年)に開校した文部科学省(当時文部省)に認可された在外教育施設です。当時、ソウルには日本企業駐在員同伴子女のためにソウル日本人学校がすでに開校していました。一方、釜山には日本人学校がなく、日本企業の皆様はお子様の教育に不安を抱えていました。そのなかで、当時の釜山日本人会長 松下敏郎氏(日本航空)が中心となり、外務省への陳情を根気強く続け、1975年1月に開校承認を得ました。同年10月1日に、小学部10名、中学部1名を迎え開校式が行われました。まもなく誕生後半世紀を迎えようとする世界95校の日本人学校、約200校の補習授業校のなかの大切な1校です。これらのことをもっと具体的に、卒業式、修了式、離任式でお伝えするのが、校長としての私の最後の務めと思い準備を進めておりました。まさか、卒業式まで実施できなくなり、学校だより「広安里」3月号の最終原稿を日本のホテルで書くことになるとは、つい数日前まで予想もしていなかったことでした。臨時休校が更に延期となってしまいましたが、学校運営委員の皆様や教職員とともに知恵を絞り、卒業式だけは今できるベストのかたちでやり遂げようとさまざまな試みを準備していたことが遥かに遠い過去のように感じられます。

 卒業生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」
日本人にとって特別な人生の節目である卒業式を行ってあげられず、卒業式を主宰する校長として心が痛みました。中学部卒業生3名のうち2名は日本に高校受検に行ったまま、釜山に戻れない状況になりました。小学部卒業生5名のうち1名はすでに本帰国しました。卒業生がそろうのは不可能な状態になってしまいました。
初めて日韓両国の国歌を斉唱する卒業式、
保護者有志の皆さんのバイオリン等生演奏で入場する卒業式、
小学部「卒業生のことば」、中学部「答辞」の両方がある卒業式、
そして、保護者の皆様企画のピザモールでの「卒業を祝う会」がある卒業式のはずでした。
思い起こすと果てしなく悔しさがこみ上げてきます。でも、一番悔しかったのは卒業生の皆さん、ご家族の皆様でしょう。校長として申し訳ない限りです。今遭遇しているのは、人間の英知を超えた存在との戦いかもしれません。卒業生の皆さんには、その危機を乗り越え、更なる成長の糧としてくれることを期待します。

 在校生の皆さんは長期間の臨時休校期間をよく頑張ってくれました。釜山日本人学校は2月24日からの臨時休校が続きました。そのまま、修了式を行うはずだった3月13日を迎えてしまいました。毎朝9時からの担任の先生からのTV電話に元気に答えてくれている姿に、日々ほっとしていました。皆さんの笑顔に、先生たちの方が救われていました。在校生も、現在いろいろな場所に分かれてしまっています。4月の始業式のときに、先生たちにその素敵な笑顔を見せてくれることを期待しています。
 
 保護者の皆様、PTA役員の皆様、三年間私の拙い学校経営を側面から圧倒的なパワーで支えてくださりありがとうございました。保護者の皆様のお人柄がそのまま子どもたちの仲の良さや思いやりに反映していました。これは、教育上何よりも有難いことでした。PTA役員の皆様には、いつも学校を明るく支えていただきました。運動会、PTAバザー、PTAサイレントオークションの運営等を拝見しながら、釜山日本人学校保護者の皆様の識見の高さや国際性に敬服しておりました。新校長にも引き続きお力添えをよろしくお願いいたします。

 釜山日本人学校運営委員の皆様、皆様からの熱烈なご支援があればこそ、私は任期満了できました。私に続き新校長にも引き続き経営面でのご指導ご支援をよろしくお願いいたします。
 在釜山日本国総領事館の皆様、子どもたちの安全と安心確保のために毎年多くのご厚情を賜り、心から感謝申し上げます。また、物的側面に加えて、丸山浩平総領事ご自身による特別授業、辛ユンチャン様とNHKクルーの皆様の学校訪問の調整、サッカー日本代表との交流の調整等、子どもたちの心的側面にもご支援くださり感謝申し上げます。
 釜山広域市教育庁(キム ソクチュン教育監)にもご配慮いただいておりました。先の臨時休業期間には、管轄外の本校にも子どもたちのためのマスクや消毒液を持参してくださいました。本校への配慮や支援を話題にしてくださった総領事館のご高配にも改めて感謝申し上げます。
 芙蓉会釜山本部、そして釜山韓日親善協会、釜山韓日文化交流協会、YMIS(青少年多文化国際奉仕団)、素木会、さらに釜山大学、釜慶大学、釜山外国語大学、韓国海洋大学はじめ本校の教育活動を支えてくださっているすべての皆様に感謝申し上げます。
 紙面の関係で詳しく載せることができませんでしたが、日本企業の皆様、韓国企業の皆様、そして日本からお越しいただいた数多くの大学生ボランティアの皆さん、沢柳企画様はじめパフォーマーの皆様、子どもたちへのご厚情をどうか引き続きお願いします。

 最後に、波乱の令和元年度の教育活動を担ってくれた本校職員に感謝いたします。文部科学省派遣教員7名、非常勤講師6名、ボランティア講師1名、警備員(用務員兼任)1名、リエゾンオフィサー1名。このうち一人でもかけていたら、本年度の学校運営は成り立たなかったでしょう。すべてのスタッフの頑張りに心から敬意を表します。釜山日本人学校を支えてくれてありがとう。これからも力を貸してください。
私たちは、献身的に子どもたちを守ってくれる現地スタッフに出会えて幸せでした。

 皆様のご健勝と、釜山日本人学校の益々のご発展を祈念し、お礼のあいさつといたします。

                    令和2年3月13日
                       釜山日本人学校 校長 長 信宏
2020年03月13日