第43回卒業式 式辞

式辞
校庭の桜が開花準備万端となり、春の到来の喜びを感じます。この佳き日に、在釜山日本国総領事館総領事 道上尚史様はじめ、多くの日本・韓国の関係者の皆様にご臨席いただき、第43回釜山日本人学校卒業証書授与式を挙行できますことを心から感謝し、お礼申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与された卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
小学部卒業の○○さん。放送委員としての活動など小学部最上級生として学校を盛り上げてくれました。○○さんは、いったん北海道の中学校に進学します。ただ、短い期間のうちにまた海外の学校に転校する予定と聞いています。明るい○○さんですから、変化の連続でもしっかり乗り切ってくれると確信します。
同じく小学部卒業の○○さん。○○さんは昨年2学期初めにインターナショナル校から転校してきました。努力家の○○さんはあっという間に日本人学校の生活に慣れ、新しい風を学校に運んでくれました。○○さんは本校中学部への進学です。
中学部唯一の卒業生、○○君。多くの活動で、ただ一人の中学3年生として下級生たちの動きをサポートしてくれました。決して出しゃばらず、しかし、後輩をしっかり支えている○○君の姿からは、先輩としてのやさしさが醸し出されていました。今回の受験での経験を、後輩に伝えてくれているのもそのひとつです。進学先は千葉県の高校です。高校の校長先生から、海外経験、しかも今の時代に日韓両方の言語・文化を体験した新入生が入ってくれるのを嬉しく思うとの言葉を頂いています。自分の夢の実現とともに、高校にもしっかり貢献してくれることを期待します。

さて、本日は、釜山芙蓉会(國田房子会長)関係の皆様にもご臨席いただいております。毎年秋に、釜山市公園墓地にて芙蓉会主催の日本人慰霊碑のお墓参りがあります。関係の皆様が、ここ釜山でお亡くなりになった日本人先人のお参りをされます。その際に、もうひとつ300メートルほど離れたところにあるお墓にもお参りします。そのお墓は、2001年にお亡くなりになったここ釜山出身の李秀賢(イ スヒョン)さんのお墓です。日本に留学していた李秀賢さんは、2001年1月26日、東京のJR新大久保駅で、線路に転落した日本人を助けようとしてお亡くなりになりました。この出来事を約20年前にニュースで見た記憶があります。しかし、ここ釜山に赴任しお墓参りに加えていただくまで、記憶からほとんど消えてしまっていました。在釜山日本国総領事館では、この崇高な精神に敬意を表し、定期的な参拝や追悼行事への支援を継続されています。
また、李秀賢さんのご両親は、本校からすぐ近くの海雲台にお住まいです。最愛のわが子を失ったときのご両親のお気持ちを考えると、いたたまれない思いになります。日本を嫌いにならないのでしょうか。日本の話題には触れたくなくならないのでしょうか。しかし、以前お会いする機会があり、その時、まったく違う言葉をいただきました。「今、日本人学校にはどれくらい子どもたちがいますか」「息子が好きだった日本のお子さんがいる日本人学校に行って、子どもたちに会いたいです」等のことばをいただき、胸が熱くなりました。

卒業生の皆さん。新たな場で、志半ばでこの世を去った李秀賢さんの分までしっかり学びましょう。韓国そして日本両国の良さを自分の体験を通じて周りの人に伝えましょう。このことは、実は皆さんにしかできないことなのです。ここ釜山に暮らし、釜山日本人学校で学んだことを誇りに次の世界にてますます活躍することを期待します。

保護者の皆様・ご家族の皆様に申し上げます。
お子様のご卒業おめでとうございます。
担任をはじめ教職員一同、全力で子どもたちの成長に寄与すべく奮闘してまいりました。しかしながら、まだまだ不十分なことも多かったことと思います。教職員を最後まで信頼しご支援いただいた皆様のご高配に、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

卒業生の皆さん。新たな活躍を期待しています。
卒業生に幸多かれ。

平成三十一年三月十四日
釜山日本人学校 校長 長 信宏

2019年03月19日